ふらふら思考

ふらふらと、思いつきのままに情報発信していきます。

村上春樹のおすすめ「ダンス・ダンス・ダンス」

 


村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」

村上春樹、好きですか?

 

いろいろな評価がされていることは知っていますが、僕は個人的に、とても大好きです。あの世界観や独特の言い回し、現実と非現実の境目あたりを、秀逸なメタファーによって行き来する感じ、素晴らしいですね。

 

デビュー作「風の歌を聴け」から続く3作品のまとめとしての意味ももっているこの「ダンス・ダンス・ダンス」。「海辺のカフカ」などのように有名にはなっていませんが、村上春樹の魅力がつまった素敵な作品です。

 

目次

 

あらすじ

 

 

前述の3作品から続く「僕」(34歳、独身)が主人公。特別な感受性を持つ13歳の美少女「ユキ」や、「僕」の中学時代の同級生で人気俳優の「五反田君」、札幌のホテルのフロントで働き「僕」が好意をもつ女性「ユミヨシさん」、そして「羊男」などとかかわりながら、奇妙で、暗く、危険な運命に翻弄される中、自分自身のステップを踏み続け、解決の糸口をたどっていく。

 

作品の魅力

 

冒頭でも述べた独特の言い回し、特に比喩や暗喩などがとてもユニークです。最近の作品と比べても、より自由に、ユーモラスに描かれているような気がします。また、「名言」と呼んでもいいようなフレーズがたくさん登場します。以下本文から引用。

「今でも聴いている。好きな曲もある。でも歌詞を暗記するほどは熱心に聴かない。昔ほどは感動しない」

どうしてかしら?」

「本当にいいものは少ないということがわかってくるからだろうね」

 

ここの店のレタスが一番長持ちする。どうしてかはわかならい。でもそうなのだ。閉店後にレタスを集めて特殊な訓練をしているのかもしれない

 

僕は彼女のブラウスの襟もとのレースを眺めていた。それは上品な動物の清潔な内臓のひだのように見えた。

 

「もしよかったら部屋によっていかないか?」と僕は誘ってみた。彼が僕の部屋を見たそうなそぶりを見せていたからだ。

「いいね」と彼は何となく恥ずかしそうに微笑みながら言った。もしよかったら一週間くらい泊っていってもいいよと言ってしまいそうになるくらい感じのいい微笑だった。

 

「でもやってみる価値はある。ボーイ・ジョージみたいな唄の下手なオカマの肥満児でもスターになれたんだ。努力がすべてだ」

 

 

「想像力のないやつらに限って自己合理化が素早いんだ」

 

 

しばらくの間、週刊誌やTVやスポーツ新聞が彼の死を食い荒らしていた。彼らは甲虫みたいに腐肉をとてもうまそうに齧っていた。そんな見出しを見ているだけで僕は吐き気がした。

 

感想

 

ストーリーもとても面白いですが、もしかすると非現実的な部分や、原因と結果がはっきりと描かれない部分などにすこし物足りなさを感じる人もいるのかもしれません。リアルさよりも、想像力を働かせながら読むのが好きな人に特におすすめです。また、単純にストーリーではなく、登場人物同士のやり取りや表現だけでも十分楽しむことができます(この作品に限ったことではないですが)。

そろそろお花見の季節が近づいてきました。桜とビールもいいですが、気持ちの良い晴れの日に外で読書をするなんていうのもいいかもしれませんね。

 


ダンス・ダンス・ダンス 上・下巻セット 全2巻 (講談社文庫)